全国各地の医療安全支援センターにおける、さまざまな活動を紹介します。
相談能力向上のための研修資料作成プロジェクトチーム(PT)始動!【その1】
平成27年7月17日 「研修資料作成PT」のメンバーが集まり、具体的な活動についての検討が始まりました。
この日は第1回ということから、支援センターの業務を行う上で現状の課題を明確化し、必要な研修の全体像の把握することにしました。参加者は2つにわかれてグループワークを行いました。グループワーク後は明治学院大学心理学部教授の杉山恵理子先生を交えて課題や研修の枠組みを整理しました。
■1.課題や研修内容の抽出(グループワーク)
Aグループは、必要な研修を支援センター内部の研修と対外的な研修の二つを大別し、内部研修を中心に検討しました。支援センターの課題を「組織の中で相談員が孤立している、ストレスフルな環境がある」として、支援センター職員の相談スキルの研修だけでなく、まわりの理解や協力をえるために支援センターの役割等を啓発していく必要があるということを確認しました。具体的には以下のような研修がでてきました。
●内部向けの研修(最優先)
- 初任者研修、ブラッシュアップ研修、クレーム対応研修
- 伝達講習、情報の共有
- 相談員の関係を作る
Bグループでは、「医療相談ができる人材をいかに育てるか」というテーマで①相談員のあるべき姿、②住民はどのような所に相談したいと思っているか、③相談員の傾向の三点を整理し必要な研修の要素を検討しました。
●相談員のあるべき姿
医療を知っている、法律を知っている、人と向き合える人、
そのために必要なことは、
- 行政の相談員であるという自覚(行政マインドの獲得)
- 法律の解釈等を進んで勉強する姿勢
- 中立の立場の理解
- 相談スキルの習得
●住民はどんなところに相談をしたいと思うか(住民の期待・ニーズ)
- 自分の要望をきいてくれる場所
- 不安を解消してくれる場所
- 医療に詳しい人がいる場所
- 何度も相談する時、できれば同じ人相談したい
- 医療機関ではなく住民の味方になってくれる人
●相談員の傾向
- 看護職は自分が病院側の立場にたって相談にのっていることになかなか気が付かない、感情が出やすい、同じ相談でも人によって方向性が違うことがある、法律を知らない、医療の経験があるがゆえにスキルアップに消極的
- 薬剤師は薬のことは詳しいが医療全体は詳しくない、コミュニケーションに不慣れなこともある
- 医師の相談には不満を言いにくい
- 事務職は医療用語がわからない、医療現場をイメージできない
●相談員のモチベーションをあげるために必要な取り組み
- 課内や医療機関で相談事例を共有しフィードバックがもらえる環境
- それぞれの経験に合わせた研修を利用してステップアップしている実感を得る
- 自己評価、他者評価をする
- ストレス解消
- 相談対応に必要な勉強をする
- 外とのネットワークをつくる
■2.研修の全体像(ディスカッション)
グループワークで出てきた課題の解決のために必要な研修についてディスカッションしました。研修のカテゴリーに分けてみると①ネットワークづくり、②メンタルヘルス、③知識習得、④インストラクションスキルの4つに整理することができました。
①ネットワークづくりの研修⇒“行政だからできることを考えるヒント”
- エンパメント型の研修(住民が自分たちで解決していく方向性)
- 課内と対外的な活動
- 事例検討、関係機関との連携、医療機関との連携
②メンタルヘルスの研修⇒“相談員としての構え“
- 個人ワーク、自己学習の形
- ストレス解消のための工夫
③知識習得のための研修⇒“初任者、中堅者、上級者”とレベル分けをした研修
- 講義、演習、ロールプレイ
④インストラクションスキルの研修⇒“教えるスキル”
- 院内講師、住民啓発
ディスカッションに加わってくださった杉山先生からは、支援センター相談員のアイデンティティ、相談員の成長プロセスについて「行政だからできることを考える」ことが大切であると指摘されました。「病院がする相談と支援センターの相談が同じであれば、病院が相談をうければいい。行政だからできることがある。 その役割への”自覚”がないとストレスはたまりやすい」また、「相談窓口のユーザーは相談員がどんなバックグラウンドであろうが、行政が相談を受けていると認識します。経験や職種の違いを強みにできるよう人材をいかに育てるかを考えていく必要があると思います」というお話がでました。
■3.検討を終えて
この議論を踏まえて、いくつかの支援センターで、医療機関の相談員への研修、住民啓発研修を行ってみることになりました。今後、PTに協力して下さる支援センターで実際に研修企画をたてながら、さらに課題を検討していきます。それぞれ、耳より情報で情報発信をしていきたいと思います。